正直者が馬鹿を見るサブプライム救済策 (The U.S. Economy(ハンカー・オジヤサール))

NBonline(日経ビジネス オンライン)より

正直者が馬鹿を見るサブプライム救済策 (The U.S. Economy(ハンカー・オジヤサール))
米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)危機とその結果起こった住宅及び金融部門の混乱━━。この事態に直面したブッシュ政権は、返済に苦しむ住宅保有者の少なくとも一部だけでも救済する計画の詳細を発表せざるを得なくなった。しかし、できる限り公平かつ現実的な施策にしようとしたにもかかわらず、多くの人を失望させるだけに終わった。

懐具合が当面心配ない優良な借り手は見放され、もともと信用力に乏しく、改善の努力もしなかった借り手に集中的に救いの手が差し伸べられることになってしまった。市場主義経済を信奉するエコノミストからは、この救済策がもたらす長期的な「モラルハザード」が指摘されている。民主党の候補たちは、政府の施策が遅すぎるし全く不十分だと選挙を意識した動きを見せるものの、問題解決にはほど遠い。

救われるのはほんの一握り

こうした状況の下、米政府は最終的な介入策を明らかにした。だが、発表された計画によれば、救済されるのはほんの一握りの借り手に過ぎない。2005年 1月〜2007年7月の期間に変動金利型住宅ローンを組んだ人だけが救済対象となるが、ほかにも多くの条件を満たす必要があるのだ。ローンが、証券化された住宅ローンでなければならないし、信用力の点数が十分に低い借り手でなければならない。

1つ目の条件の下では、ローン債券がまだ発行元の銀行にある借り手は救済を申請できない。自分の住宅ローンが証券化されているかどうかなどということは、借り主の意思でどうこうできる問題ではないにもかかわらずだ。
2つ目の条件では、借り手の信用格付けが一定以下でなければならず、しかもローン契約時から10%以上改善していてはいけない。景気に好刺激を与えるための計画なのに、「素行の良くない」借り手に有利なこの仕組みでは、まじめに返済してきた借り手や、過去2年の間に財政状態を向上させようと汗を流してきた人々を不当に扱うことになる。

一方で救済対象になれば、借り手はローン金利の上昇を5年間凍結されるので、毎月の支払額が恐ろしく増えるまでの長い猶予ができるのだ。この違いは大きい。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20071214/143094/?P=2&ST=sp_fp