米医療保険にメスは入るか?

NBonlineより

医療保険にメスは入るか?
 改革の成否を握るカギは、いずれの案でも共通している。医療コストの抑制である。
 マケイン候補が提示する改革では、市場競争の活発化によって、国民が購入できる水準にまで、医療保険の費用が下がるかどうかがポイントになる。団体保険の平均保険料は年間約1万2000ドル(2007年)。このうち9000ドル近くを企業側が負担している。個人保険の保険料は加入者によってばらつきがあるが、罹病リスクの高い加入者の場合は団体保険よりも高くなる。他方で、マケイン案で個人に振り替えられる優遇税制は年間5000ドルである。
 民主党の各候補が提案する改革案でも、医療コストの抑制は欠かせない。公的保険・支援の拡充は、米国の財政を圧迫する。民主党の各候補は、高所得層増税などを医療保険改革の財源にする方針だが、現在のペースで医療コストが拡大すれば、民主党の改革案は財政的に持たなくなる。
 残念ながら、医療コストを抑制できる特効薬はない。医療の質との兼ね合いが難しいからだ。議会予算局(CBO)によれば、医療費上昇の約50%は技術革新の結果だという。コスト抑制策が技術革新を妨げれば、医療の質は低下しかねない。
 現在の米国では、効果的な治療法が広く利用されているわけではない。その1つの証拠とされるのが、地域間の違いである。米国では、1人当たりの年間医療費には地域によって2.7倍の違いがある(メディケアの場合)。しかし、1人当たりの医療費が高いからといって、その地域の死亡率が低いといった関係性は見られない。全米で効果的な治療法が利用されれば、医療コストは3割程度削減できるという調査結果もある。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20080317/150252/