混合診療を認めないのは違法――東京地裁判決を読む

日経メディカル ブログ 竹中郁夫の「時流を読む」より

混合診療を認めないのは違法――東京地裁判決を読む
 今回の訴訟の主な争点は、「保険診療インターフェロン投与)と自由診療(リンパ球移入治療)を一体的な医療行為と見るべきかどうか」というところですが、原告の清郷さんは「2つの医療行為で、保険診療分には保険適用すべき」と主張し、被告の国は「併用すれば互いに影響を及ぼすため、2つの診療は一体で保険は適用できない」と主張します。判決は、「2つの診療は一体とは見なせず、個別に保険適用すべきか判断すべき」で、憲法論以前に混合診療を禁じる法的根拠はないと原告に軍配を上げました。
 11月8日の日本経済新聞で、八代尚宏国際基督教大学教授は、「画期的判決」と評価して、「公的な保険診療は財政的制約もあって急拡大できないが、個人負担で受ける自由診療が増えれば技術の進歩につながる」とコメントし、規制緩和路線がより進むことを期待しています。法律学者にも患者の選択を奪うのは、生存権の侵害と評する方もいます。
 患者団体には、患者の選択肢が増えると喜ぶ半面、治療に格差社会的な面が強くなるかもしれないという危惧感が見られます。患者とすれば、本来保険診療で満足で安全な治療が受けられるのが一番良いのでしょうが、混合診療が進んで「保険ならこの程度しかダメだよ。あとは自費でね」という低位安定が生じれば、病気で倒れてしまう前に破産で倒れる危険も出てきます。医師や医師団体では、このような保険診療の縮小化への警戒感からもっぱら混合診療には好意的にはなれないようです。

「併用すれば互いに影響を及ぼすため、2つの診療は一体で保険は適用できない」というのにも一理あるように思えるし、「公的な保険診療は財政的制約もあって急拡大できないが、個人負担で受ける自由診療が増えれば技術の進歩につながる」というのにはいささかの違和感を感じます。
ただ、どうするのが最適解なのかというアイディアは持ち合わせていないのですけれど、、、。
今後の行方を見守りたいと思います。